コーナーで外側を回ると不利なのか

今回はちょっとくだけた話題ということで競馬の話。

TV 中継などで競馬を見ていると、3~4コーナーあたりでぴったりと内ラチ沿いを走る馬と外側に大きく膨らむ馬があることに気付きます。馬自身がコースを選んでいるのではなく騎手の判断なのですが、では両者でどのくらい走る距離が変わってくるのか、定量的に見てみました。

競馬場のコースは一般的にはこんな感じ(これは中山競馬場の例)。

中山競馬場

3~4コーナーの半円形の部分について、内ラチ沿いを走る場合の半径を $R$、外側の馬はそこから $w$ だけ離れた位置を走るとすると、走行距離の差 $\Delta L$ は半径 $R$ に関係なく $w$ だけの関数になります。

$$
\Delta L = \pi (R+w) – \pi R = \pi w
$$

次に馬1頭分の幅がどのくらいかですが、スタート地点に設置される発馬ゲートの1頭分の幅が約1メートルなので、ここでは1メートルと仮定します。

したがって、例えば内ラチ沿いぴったりを走る馬から3頭分だけ外側を回った場合、$w$=3m になるため約9.4メートル長く走ることになります。馬の長さ(1馬身)は約2.4メートルとされているので、3頭分外側を走るだけで3.9馬身ものロスになります。競馬はゴールが接戦になることが多いので、この距離の差は結果に大きな影響を与えそうです。

もちろん、馬場状態(内側が荒れていたら外側有利)や馬の気質(馬群に揉まれると意欲をなくす)の影響もあるためそんなに単純な話ではないのですが、コーナーでのコース取りの差は意外と大きなファクターになります。外側に出したがることが多い騎手などには気を付けておくのもいいかもしれません。


個人的に、この走行距離の影響に関して思い出すのが2002年の皐月賞です。

皐月賞

この時はタニノギムレットという馬が1番人気で、能力から考えたら単勝2.6倍は高すぎなので狙い目と見ていました。このレースでの4コーナー付近の状況がこちら。

皐月賞

タニノギムレットはここにいます。四位洋文という騎手(2020年に引退)はこういう「大外ぶん回し」をやりたがる傾向があるのですが、それにしても内側を回った馬から10頭分くらいは外側。$w$=10m として計算すると、実に30メートルも長く走っていることになります。これだけ長く走ってよく3着まで来たものですが、このときは「こんなに強い馬を勝たせられなくてどうするの?」などと思ったものです。

皐月賞

このレースで1着になったノーリーズンという馬(15番人気)はここ。単勝万馬券という波乱でした。

皐月賞

1着馬と比べても5頭分くらいは外側を走っていて、$w$=5m とすると余計に走った距離は15メートルほど。約6.5馬身のロスになっていて、実際の着差が 1 3/4 馬身なのでコース取りによっては十分に逆転できたはず。騎手の性格や癖も重要なファクターということを実感します。


今回はくだけた内容のコラムを書いてみました。今後も技術的なコラムの合間にこういう話題をはさんでいくので、軽い気持ちで読んでみてください。