名刺に電話番号を載せない理由

合同会社アイナックエンジニアリングの名刺には電話番号は載せていません。

名刺

こういう名刺も近年は増えてきているとはいえ、名刺に電話番号が載っていないのはありえないという感覚を持つ人もいると思います。では、なぜあえて潮流に逆らっているのか、理由は以下の通りになります。

  • 電話は自分と相手の時間単価が同じという条件で成り立つツールである

年収数百万の人、数千万の人、数億の人では、当然ながら1秒当たりの価値は違います。それにもかかわらず、電話は掛ける側と受ける側が等しく時間を使うツールです。この点を意識すれば、そう気軽に電話することはできません。

電話番号を載せないことは「私はあなたの時間を大切にしています」というアピールにつながります。

  • 電話は他人の時間をいきなり奪うツールである

堀江貴文氏が「電話してくる人とは仕事するな」というコラムを書いています。堀江氏の考え方には自分も賛否がありますが、このコラムに関しては共感できる部分が多くあります。

自分が業務に集中しているとき、電話がかかってくると思考が中断されることになります。特にシステム開発を行っているときなどはコーディングに関して相当に集中して作業を行う必要があり、このタイミングで電話がかかってきたりすると強制的に脳内短期ワーキングメモリがクリアされてしまいます。電話が終わると再びワーキングメモリを構築するところから始める必要があり、明らかに生産性が低下します。

電話する側は、今その時間で言いたいことを言えば問題は解決します。しかし、電話を受ける側はそうではありません。電話によって作業が止まり、相手の話を聞かなければなりません。

メールやチャットなどの非同期の連絡手段であれば、作業が一段落したときなど区切りのいいタイミングで対応できます。相手の貴重な時間を奪わないように心がけることが大事であり、そのためにも電話は極力使うべきではないと考えています。連絡を取りたいとき、すぐに電話に手が伸びる人が不思議で仕方がありません。

  • 電話は余計に時間がかかるツールである

電話のほうが早いという人がいますが、電話は記録が残らないため「言った言わない」という展開になる可能性があります。これを避けるために話した内容を文章にまとめてメール等で共有する必要があり、結局は二度手間になってしまって余計に時間がかかることになります。

  • 電話は消え行くツールである

私が社会人になったのは1995年ですが、当然ながら当時は連絡手段として電話が頻繁に使われていました。その後、非同期の連絡手段としてメールが広く普及すると、電話は次第に急な用件のみに使われるツールに変わっていきました。

現在はさらにコミュニケーション手段が発達し、急な用件であってもチャットツールやメッセンジャーなどを使うのが当然の社会になっています。自分自身を振り返ってみても、ここ10年ほどは自分から電話するのは年に数回あるかどうかです。

電話はもはや警察や救急車を呼ぶときなど緊急事態が発生したときのみ使用するツールであり、日常的なコミュニケーション手段としては消えていくと考えています。


以上の理由から、私は「電話の時代はすでに終わっている」と考えています。このため、名刺に電話番号を載せるのはやめました。電話番号を載せるスペースは他の情報のために使用するほうが効果的です。

今後は電話番号が載っていない名刺が一般的になっていくと考えます(いずれはメールアドレスの記載もなくなり、そもそも名刺という自己紹介ツール自体もやがて消えていくと思いますが)。現時点においては、少しだけ時代を先取りしてみました。